「人は人の中で守られる」いくの学園のモットーです。

ミッション

いくの学園がめざすもの
暴力や差別のない、誰もが人として尊重され、安心して暮らせる社会をめざします。
そのために、以下をミッションとして活動しています。

1. 人の暮らしの基本である「家」や「親密な関係」において、暴力を受けたり暴力におびえて生活することは、その人の生活や生きることそのものを脅かします。いくの学園は、DV・性暴力・虐待の社会問題に取り組むため、相談支援とシェルターの運営をします。

ミッション1に対する私たちの思い

DV、ストーカー、虐待の事件が報道されると「どうして逃げなかったのか」「話し合えば・・・」という話がでてきます。しかし、親密な関係性でおきている暴力は、身体的暴力もですが、精神的、社会的、性的な暴力が複合的に、継続的に起きていることが多くあります。家族の歴史や家風、「絆」や「恋愛規範」もからまっています。社会的な制度や構造も被害を生み出し、逃れられなくさせています。大事にしたい、大事にされたい関係の日常で暴力があると、サバイバー(被害者)はその中で生き延びることに精いっぱいで、自分がどうしたいのか、どうすべきなのか考えることがとても難しくなります。自分に何が起こったのかを理解したり、どんなことが必要なのか、できるのか等、これからのことについて冷静に考えるためには、暴力がない場所で、安全と安心の保障がないとできません。性暴力被害も同じ支援が必要です。

「シェルター」は、サバイバーの身の安全を守ることと、加害者と離れた安全で安心な場と、日常生活(寝る、食べる、お風呂に入る、人と関わる等々)を提供し、暴力のない生活を体感して、これからのことを、本人の意志を尊重し一緒に考える場所です。
加えて、電話相談など、気持ちの整理のお手伝いや、具体的な制度利用などについての情報提供での支援、また暴力被害を生み出さない社会づくりのための発信も必要だと考え、活動します。 親密な関係とは夫婦間・同性カップル、恋人、親子、兄弟姉妹等を指しますが、時には祖父母や叔父叔母、同居人等も含みます。

2. 地域では、暴力から離れた後の生活と心身の回復に必要な支援が充分ではありません。いくの学園は、回復支援の場を提供し、当事者が発言しやすい場づくり、ネットワークや仕組みづくりに取り組みます。

ミッション2に対する私たちの思い

暴力は、その人の生きる力を奪い尊厳を傷つけます。特に近しい人からの暴力は、他者への信頼が根本的にゆらぎ、その後の対人関係に影響を与えます。身体的な後遺症の残っている人もいます。子どもの頃に家庭で虐待を受けた人が、大人になってからDVや犯罪被害に巻き込まれて度重なるトラウマを経験すると、その影響はさらに強いものとなります。

また、社会が暴力被害の後遺症、その深刻さや回復に長い時間が必要なことについて充分に理解しておらず、そのことが余計に本人を苦しめ、地域での生活を困難なものにしています。シェルターを出た後、地域で新しく家を借りて住みはじめても、根源的な安心感が壊されているために、暴力をふるう人のいない安全な家であっても、安心を感じて暮らすことが難しい人も少なくありません。いくの学園では、「人は人のなかで守られる」というモットーを大事にしています。人によって与えられた傷つきは人のなかで癒され、自分本来の力を取り戻し、時には、新たな力が生まれてくるという、いくの学園の経験から生まれた言葉です。安心を感じられる関係のなかで、ゆっくりと安全感を取り戻していくのです。

シェルター入所中だけでは暴力の後遺症を充分にサポートしきれない現状があり、地域でのアフターケアが必要です。役所、保健センター、病院、学校など、地域のあらゆる場面において暴力被害の影響が知られ、被害当事者が名乗らなくても配慮され、サポートが受けられる社会が理想です。今は、新しい地域に“たまたま”理解ある人がいて助かった、という程度で、一般化・制度化されていません。

いくの学園は、暴力被害の影響をもっと社会に知ってもらうために、DV離脱後の支援に取り組みます。当事者が声を上げやすい場を作り、それを届ける啓発活動をします。また、当事者の直接支援を通して、地域のネットワークを広げたいと考えています。

3. 安心して住める家や居場所のない人が、性的な関係や性産業に利用されることがあります。いくの学園は、地域に開かれ、気軽に利用や相談ができ、社会参加につながる機能を持った居場所を作ります。

ミッション3に対する私たちの思い

親密な関係の暴力の多くは、人の生活の基盤となる家の中で起こっています。
家は、雨風から身を守る場所。そして学校や仕事などから戻り、おなかを満たす場所、お風呂に入ってさっぱりしたり、ほっとしたり、明日の準備をしたり、テレビを見て笑ったり、親しい人と時間を共有したり、人の気配を感じながら1人でも過ごせたり、安心して眠ることができる、物理的にも心理的にも必要な居場所です。そんな家が暴力の発生する所になると、毎日がサバイバルになってしまいます。加 害者にどのように接するか、暴力を避けたり、防いだりするかを常に考えざるを得ない生活になります。
このような状況では、家の中より外の方が安全と思える人がいます。少しの間の避難のために、オールナイト営業のお店やコンビニなどに行ったり、中には家出や家から出るために恋人や結婚を選んだり、遠くで下宿や就職したりする人もいます。

家の外で一人で居場所を探す時に、いろいろな事情(年令や性別、手持ち金や住所の有無)を受け入れてくれる場所が性産業の中にあります。また、泊まる場所を得るために性関係を引き換えにする人もいます。助かっている人もいると思いますが、搾取にあう人もいます。自分で選んだように見えても、その時は本人にとってそれしか選択肢が見つからない状況もあります。一時的には安全に思えるかもしれませんが、危険に気づいてからでは、そこからも逃れることが難しくなります。また、搾取にあっていることに気が付けない状況や、仕方ないとあきらめている人もいます。

いくの学園は、シェルターよりもっと日常的に利用や相談ができ、「安心・安全な生活」のための情報―暴力の加害者から安全に離れる方法や、利用できる社会資源なども気軽に得られる居場所を作りたいと考えています。選択肢を増やし、一人ではなく、仲間と一緒に支えあえる関係が作れる場所の実現をめざします。

4. LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)は、性差別を受け、生きづらさを抱えやすい状況にあります。いくの学園は、LGBTが、DV・虐待・性暴力について、安心して相談できる場を提供します。

ミッション4に対する私たちの思い

婦人保護施設の時代から、いくの学園は必要な支援が行き渡っていない人たちを念頭に常に活動してきました。DV 防止法は「妻」も「夫」も被害者の可能性として想定していますが、範囲はあくまでも異性の関係です。同性パートナーからのDVは蚊帳の外に置かれています。

相談先に困るLGBT のDV 等暴力サバイバーを歓迎していること、安心して相談してほしいという思いを込めて、10年以上前から学園のリーフレットやホットラインカードに明記しています。LGBTコミュニティにもDV の問題があること、そして支援を求めようとするサバイバーの中にLGBTも当然いるということを啓発する意味も含んでいます。LGBT的なサバイバーと話したことはないとおっしゃる相談機関は結構ありますが、相談してほしいと積極的に呼びかけると、支援につながる人はたくさんいます。

多様な性を生きる当事者の話を聴くと、性暴力、家族からの暴力(虐待)、そしてパートナーからのDV には、LGBTならではの被害のかたちもあることに気づきます。その特有性に合った安全確保の仕方と回復の仕方がある場合があります。暴力の全体的な構図が同じでも、それを生き抜こうとしている一人ひとりの当事者の個別性を隠さなくても相談できる機関が必要だと考えています。LGBTであることが否定されることなく、サバイブする力につながる支援のあり方を模索し続けたいです。

ホットライン・相談電話 TEL 090-9629-4847 毎週水曜日(祝日休)12時~17時

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