2020年7月に閉所した生活回復支援業のふりかえりを行いました。そのまとめを機関紙すたあと98号より転載します。
生活回復支援事業(まいぷれぃす)のふりかえり
2020年7月に、障害福祉サービスを根拠とした通所施設を閉所しました。なぜ事業がうまくいかなかったのか、法人ではふりかえりの会議を数回にわけて実施しました。
3年間の事業期間で赤字を改善することができず、経営的に継続が難しい状況が続き、最終的には新型コロナウィルスによる影響で閉所する決定となりましたが、難しい状況の背景として、利用者との信頼関係を充分に築くことができず、なかには、職員との関わりにおいて、利用者に精神的な傷つきをおわせてしまうこともありました。また、制度利用の上で適切な情報提供が充分にできていなかったり、説明が不充分だったこともあり、職員の知識不足や伝え方の問題もありました。
支援の質を見なおした時に、何かしらの被害経験がある方と日常的に、複数の方たちと並行して関わるので、職員の側の傷つき体験や課題が頻繁に引き出されやすい状況でした。職員は「自分に何が起きているのか」を認識する能力が必要ですが、職員によってその能力や訓練に個人差があり、また、特に経験の乏しい職員をフォローする体制がなかったため、新しい職員が増える中で連携にほころびが生じ、利用者との関係を悪化させた側面があります。
いくの学園はこれまで、縦の指示系統ではなく、お互いが相談しあう横の関係で運営されてきたため、職員数や支援対象者が増えたことで、結果として判断が遅くなり、職員が無気力・無責任になりやすい状況となっていました。もちろん元から問題がなかったわけではありませんが、職員数の増加によって課題が顕著となり、それを繕いきれませんでした。
トラウマインフォームドケアという概念の中に、トラウマの臨床現場で起こりやすいと言われている「並行プロセス」があります。例えば、利用者が過覚醒になると、支援者も過覚醒になる等の連鎖が起き、組織全体がトラウマの影響を受けて、とげとげしくなったり、反対に危機に対して無気力・無関心になったりすることを指します。支援の対象者と同じような反応が支援者や組織にも起き、良い循環ではなく悪い循環がまわり出します。そのような並行プロセスが、残念ながら「まいぷれぃす」でも起きていました。事業を開始する時点で、職員体制等が充分に揃っていない、また、事業の目標や指針、支援の範囲が充分に検討されず、職員に浸透していない状況で、見切り発車してしまったのではないか、とのふりかえりもあります。
今後シェルター運営と相談業務を継続していく中で、ふりかえりで得たことを忘れずに、ひとりひとりの相談者の方との丁寧な関わりを積み重ねていきたいと考えています。