藤井伸生
いくの学園監事、京都華頂大学名誉教授

2022年11月22日(火)、本セミナーにオンライン参加しました。共催団体としていくの学園も加わっています。今回のテーマは「女性に対する暴力をなくすために、男性とともに取り組む」でした。第1部基調講演としてホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表及び関西大学教授の多賀太さんが「女性に対する暴力をなくすために、男性に何ができるか」 との演題で話されました。第2部トークセッションとして、前述の多賀太さん、連合大阪の松井千穂さん、大阪府女性相談センターの柴田智恵さんが登壇されました。ここでは多賀さんの話を中心に紹介させていただきます。

 私は生野学園(社会福祉事業財団運営)現地建替運動を担った「大阪の婦人保護事業を守る会」のメンバーとして関わって以来、30数年間いくの学園の支援活動をさせていただいています。売買春問題・DV問題は、男としても関心を持つべきだとずっと考えてきました。多賀さんも「男性にとって女性への暴力は他人事ではない」といわれていました。そして多賀さんは、DV問題に関わる上で男としてどう考えるべきか悩んでいたが、ホワイトリボンキャンペーン創始者のマイケル・カウフマンさんが「暴力を振るわない男は罪悪感を感じなくていいが、やれることがある」(見聞きした暴力を止めたり、暴力が発生しにくい環境作りに貢献する等)の言葉に触発されたといわれました。この点について「そうだなあ」と思いました。

 女性への暴力撲滅に向けた社会的取り組みが重要であるとの問題意識から4つを指摘されました。「①被害者の相談・保護・自立支援、②加害者の更生、③未然防止、予防教育、④傍観者への働きかけ、暴力を許さない社会意識づくり」です。日本では②がとくに遅れているとの指摘でしたが、すべてにおいて不十分なようです。

 海外の民間企業vodafone(携帯電話事業会社)の取り組みが紹介され、興味深く聞きました。DVと虐待が従業員の生活を脅かすとともに企業の生産性を低めていることを確認し、従業員の保護と支援、社会正義、ビジネスの各側面から、企業がDVと虐待に反対の声を上げることの重要性を唱え、被害者支援の指針を作成、従業員への啓発・研修を実施したとのことです。こういう発想から企業がやれることがあるのだなあと思いました。

 最後に、私たちひとり一人ができることとして、5点指摘されました。①DVについて正しい知識を学び、伝えること。このことで周りや社会が変わるとのことです。②自身の人権が暴力で侵害されていないか敏感になること。このことで加害についても気づきやすくなるとのことです。③決して暴力を振るわない。ことばによる暴力も。④被害者を守り、支えること。受け止め、相談機関につなげることが大切とのことです。⑤支援や予防啓発の基盤を支えること。財政支援も大切な活動です。

 私はいくの学園への関わりを通して、家庭内暴力を行う男社会(企業)のあり方にもメスを入れるべきではないかと考えてきました。加害男を擁護するわけではありませんが、家庭内暴力を行う背景として、職場における過度な競争、長時間労働、思ったことを発言できない職場環境などがあるのではないかと思います。外(職場)でのストレスが家庭での発散(暴力)になっている面もあるということです。本セミナーのテーマであった「女性に対する暴力をなくす運動」を検討する場合には、この職場環境の改善にも迫ってほしかったなあと思いました。