レポート1:「婦人保護施設「生野学園」研究チーム結成」を公開しました。

婦人保護施設「生野学園」研究チーム結成

<立命館大学准教授丸山里美さん>

このたび、NPO法人「いくの学園」の前身である、婦人保護施設「生野学園」の資料整理を通して、女性のさまざまな困窮状態を歴史的に明らかにするための研究をはじめさせていただくことになりました。

私はこれまで、女性の貧困について、特に女性のホームレスを対象に研究をしてきました(一昨年、その成果をまとめて『女性ホームレスとして生きる』という本を出版しました)。その一環で、女性施設の職員さんたちの勉強会に参加した際、「いくの学園」のスタッフの方と知り合ったことがご縁で、今回の資料整理をお引き受けすることになりました。

「生野学園」は、売春防止法制定以前からある、全国的にも珍しい婦人保護施設の一つです。

1946年に「婦人成美寮」として設立されたのち、1950年に運営が大阪福祉事業財団に引き継がれ、「生野学園」と名称変更しました。その後、婦人保護施設の統廃合により、1997年になくなるまで50年間、約4000人の女性たちを支援してきました。なかでも、早くから施設独自の対応として、女性のための電話相談を実施していたことや、統廃合に際して「大阪の婦人保護事業を守る会」を結成し広く反対運動を展開したこと、それが現在の「いくの学園」の設立につながったことなど、その先進的な取り組みは、施設がなくなった以降に研究をはじめた私も、よく耳にしていました。

その貴重なダンボール30箱ほどの資料をはじめて前にしたときには、とても興奮しました。なかには、触ると崩れてしまうような資料もあり、整理が急がれます。そこで研究者仲間に呼びかけて、資料整理に向けた研究会を発足、メンバーは大阪市立大学准教授をはじめとした研究者7名です。

この研究に際し、幸いにも日本学術振興会から科学研究費助成事業として研究費の助成を受けらえるようになったため、2015年4月から3年間の研究を計画しています。さっそく6月からは、個人情報に十分配慮したうえで、データの入力と、資料の写真撮影の作業をはじめています。

「いくの学園」の設立20周年にあたる2017年をめどに、一定の成果をまとめて、ご報告したいと考えています。
当時を知るみなさまには、ご協力をお願いすることがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。


丸山さんありがとうございました。

※この記事は会報誌「すたあと」74号より 一部加筆訂正を加えました。

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